シフトの希望は、ガラス張りにしていい。みんなが見れば、譲り合いが起きる
「あの人ばっかり、希望が通ってる気がする」
職場で、こういう言葉が出る瞬間がある。
口に出されたわけじゃない。表情と、ため息と、空気の温度で、なんとなくわかる。
組んでいる人が悪いわけではない。希望を出した人が悪いわけでもない。
ただ、誰がいつ取れて、誰がいつ取れなかったかが、お互いに見えていないだけ。
見えないと、人は勝手に「自分ばかり損してる」と思う。
私もそう思っていた。
私はシフトを組む管理職ではない。でも、いちスタッフとして現場にいると、組む人も組まれる人も、それぞれにシフト調整で大変な思いをしているのがわかった。だからこそ、誰の目にも公平性が見える仕組みが作れないかなと思ったのだ。
数字で見えれば、譲り合いになるはずだ
GW中に、職場の献立アプリを作ってから、続けてシフト表のアプリを自分用に作ってみた。前回と同じで、最初に必要だったのは「何に困っているのか」を言葉にすることだった。
最初は、ただの「希望休が守られるシフト表」だった。
でも、作っていくうちにすぐ分かった。
足りないのは「自分の希望が叶ったかどうか」だけじゃなくて、「みんなの希望がどれくらい叶っているか、お互いに見えているかどうか」だったのだ。
そこで、画面の真ん中に、もう1個カードを足した。「公平性ダッシュボード」と名前を付けた。
5人ぶんのカードを、画面に並べる設計にした。直近3か月で、誰が何件希望を出して、何件通ったかが、ひと目でわかるようにする。そして、取得が一番少ない人には、ピンクの「今月優先」バッジが、自動でつくようにした。
これを見れば、きっとこう思うはずだ。
「あ、Eさんまだ少ないんだ。じゃあ今月、私は譲ろう」と。
誰かの犠牲の上に成り立つシフトではなく、数字が並ぶことで、自然な譲り合いが生まれたらいいなと思って作っている。
希望には、3段階の優先度を入れた
希望を入れる画面も、思い切って変えてみた。
これまでの「希望休(×)」は、冠婚葬祭や通院のような、絶対に動かせないもの。それとは別に、「できれば休みたい日」を、月2回まで入れられるようにした。
優先度は3段階。
◎ どうしても(家族旅行・子の運動会)
○ できれば(通院・親の付き添い)
△ 余裕あれば(美容院・友人と会う)
入れた瞬間に、「今月の希望:◯/2件」「直近3か月の取得:◯/◯日」「有給残:◯日」が表示される。自分が今、どれくらい希望を使ったかが、入力中に見えるようにした。
これなら「あ、もう2件入れてた。今月はここまでにしよう」と、自分で気づけるはずだ。
おまかせを押すと、優先度の通りに動く
おまかせボタンを押すと、1か月分のシフトが一気に組まれる。
ロジックは、人間がやっていた判断を、そのままアプリにやらせた。
◎ の希望は、絶対に休みにする。○ の希望は、できる限り休みにする。△ の希望は、人手に余裕があれば休みにする。そして、直近3か月で取得が少ない人を、優先的に休みに回す。
色で一目でわかるようにした。早番は黄色、遅番は青、昼番(短時間)はオレンジ、日勤は緑、休みはグレー。希望が入っていたマスには、右上に小さな ◎○△ の印が残るので、組まれた後でも「ここは希望だったのに出勤になった」が、ひと目で見つかる作りにしている。
その下には職員ごとの月集計が並ぶ。早番が多すぎる人、遅番に偏っている人、希望が出ていたのに通らなかった人。数字で見えれば、月末に「次はここを調整しよう」と建設的な話し合いができるようになるはずだ。
翌月になると、優先が自動で動く
たとえば今月、私の希望が出勤に回ってしまったとする。
すると、来月の公平性ダッシュボードでは、私のカードに「今月優先」バッジが移動する。来月の私は、おまかせを押した時に、優先的に休みに回してもらえる。
「貸し借り」が、自動で記録される感覚に近い。
誰かが声を上げなくても、数字が静かにバランスを取りに行ってくれる。そんな仕組みを目指した。
正直に言うと、最初は壊れていた
ここまでがアプリの完成形です。
でも、最初に動かした版では、「直近3か月の取得実績」がなぜか当月分しか出てこなかった。過去のデータを、いつのまにか上書きしていたらしい。
これも、AIに何度か「ここがおかしい」と伝えながら、ようやく直った。
作ってみて、思ったこと
希望が叶わなかった月があるのは、仕方がない。営業時間中ずっと3人体制を守るには、誰かが出勤する必要がある。
でも、「自分ばっかり損してる」という気持ちは、数字が並んでいないから生まれる。
直近3か月の取得実績が、お互い見える状態にあれば、「Aさんは2件、私は4件」と、自分から気づける。気づければ、譲れる。譲れれば、来月は譲ってもらえる。
シフト表は、組む人ひとりの責任にしないほうがいい。組まれ方が見えるようになると、組まれる側も、調整に参加できる。
70点でも、まず使ってみる。使いながら直していく。それくらいの軽さでいい。
前回の献立アプリのときと、結局、同じだった。「何に困っているのか」を言葉にできれば、AIが形にするのを手伝ってくれる。
あなたの現場では、職場への意欲や評価はどんな形で見えていますか
あなたが今、職場で「ちゃんと働きたい」「ちゃんと貢献したい」と思っているその気持ちは、誰に、どんな形で見えているだろうか。
そして、その意欲や評価は、毎月のシフトという形で、ちゃんと合っているだろうか。
頑張っている人ほど忙しい日を任され、希望が通らず、負担だけが偏っていく。そんなことがもし起きているとしたら、それは「意欲が見えていない」のと同じことだと思う。
シフトは、ただの予定表ではない。「あなたの状況をチームがどう見ているか」が、いちばん素直に映る場所だと、私は思っている。
世の中には、すでに会社で導入されている立派なシフトシステムもあると思う。でも、それがシステム化されていても「本当に公平に処理されているか」がお互いに見えていなければ、結局は疑心暗鬼を生み、作る側にも作られる側にも心理的負担になってしまう。
毎月の希望が、組んでいる人ひとりにしか見えていないなら、そこに摩擦が生まれている可能性がある。
ガラス張りにしてみると、案外、人は譲り合う。
公平性が見える化されることで、シフト調整という心理的負担から双方が解放される。そして、「気持ちよく働いて、本来の職務を遂行する」というチームの本当の目的を、全員で共有できるようになるのではないかと思う。
これまで、個人的な勤務希望は管理者にだけそっと伝えて、あとは結果を待つだけだったかもしれない。でも、お互いの状況が見えるようになると、「ああ、私たちは一緒にこの職場で働いているんだな」という連帯感のようなものが生まれる気がしている。
あなたの意欲も、あなたの事情も、いまのシフトに、ちゃんと姿を表していますか。
公平性が見えれば、空気が変わる。
ぜひ、あなたの現場でも作ってみてください
私が作ったものはあくまで自分用の試作ですが、「現場の何に困っているか」さえ言葉にできれば、今はAIが形にするのを手伝ってくれます。
特別なスキルがなくても、現場の「ちょっとした不満」を解決するツールは作れる時代になりました。
実は前回の「献立アプリ」の記事の後に、「やなこ」さんという方が私の記事をきっかけに実際にアプリ作りを試してくださり、「まるでドラえもんが現れたような感じ」とご自身の記事で紹介してくださいました。やなこさん、本当にありがとうございました。
この記事が、皆さんの現場の空気を変えるヒントになれば嬉しいです。ぜひ皆さんも、自分たちの職場に合った仕組み作りを試してみてくださいね。
あえて試作版は置きません。ぜひ自分で触ってみて
今回は、あえて私が作った試作版へのリンクは載せませんでした。実際に手を動かして、AIと一緒に作っていく体験を絶対一度はやってみてほしいからです。
AIの進化は早すぎて、今の具体的なやり方やプロンプトは、すぐに違うものになってしまうでしょう。だからこそ、表面的な手順を教え合うことにはあまり意味がないと思っています。
でも、「現場の何に困っていて、どうやって解決策にたどり着くのか」という思考のプロセスは、ツールが変わってもずっと大切です。
そういった「考え方」の部分については、今後また別の機会にどこかで共有できたらいいなと考えています。
📮 noteには書ききれなかったあとがきや、記事を書く前に考えていたことは、Substackに置いています。
「Substackでは何を書いているの?」という方はこちらにまとめました。
▶ ひかるのSubstackについて